■偽イソップ寓話集■
twitter上で作っている「イソップっぽい」寓話集をここに置いていきます。100話を目指して作っていきます。

【第一話 犬と狼】
 犬が狼に言った「私はご主人様に仕えて役に立っているのに、お前はご主人様に仇をなすばかりで仕方のない奴だ」狼が答えて言うには「何を言うか。私とお前は同じだ。お前は人間に仕え、私は狼に仕えているだけのことだ」

【第二話 アフロディテと痩女】
 やせぎすの女の前にアフロディテが現れて言った「お前は痩すぎて全く美しくないのに、なぜ持て囃されるか」女が答えた「今は痩せているのが流行りです。あなたは少し太り気味ではないですか」美の基準は時と共に遷ろうという事を示す話である。

【第三話 続兎と亀】
 以前昼寝をして競争に負けた兎が亀に再戦を申し込んだ。亀が答えて「以前はあなたの得意な陸で競ったので、今度は私の得意な川でやりましょう」いざ勝負すると、兎は溺れて前に進めず再び敗れた。軽率な言動のせいでいつも失敗する人にこの話をするとよい。

【第四話 ヘルメスと守銭奴】
 自分の財貨を常に背負って歩かないと気がすまない守銭奴がいた。その男はヘルメスに山のような財産がほしいと毎日祈っていた。そこでヘルメスが望みどおりに財貨を増やしてやったところ、男は押し潰されて死んでしまった。貯めることしか知らぬ者への戒めの話。

【第五話 ゼウスと蝉】
 蝉は己の寿命が極端に短いことを嘆き、ゼウスに寿命を伸ばしてくれるよう泣訴した。ゼウスははじめこれを哀れんだが、あまりにしつこく泣くので怒り、寿命を伸ばす代わりに伸びた寿命の間は決して土の中から出られないようにした。執着はしばしば災いを呼ぶという話。

【第六話 死神と男】
 ある男の前に死神が現れた「お前は今日死ぬ運命だ。命を貰うぞ」男が答えて「妻に会いたいので一日まってくれ」次の日に死神が現れると「息子に会いたいのでもう一日」また次の日に死神が現れると問答無用で男の命を刈り取った。口先だけのごまかしは物の役に立たない。

【第七話 鹿とライオン】
 立派な角を持つ鹿がいた。動物達はみなその角を褒め、鹿も褒められて当然と自惚れていた。ある日ライオンが鹿に寄ってきた。鹿は逃げもせず「君も私の角を褒めにきたのか」ライオンが答えて「お前の角ではなく肉に興味があるのだ」自惚れは思慮分別を奪うという話。

【第八話 鹿を飼う男】
 ある男が鹿を飼うことに成功した。ところが畑を耕せては牛に劣るし、荷を背負わせては驢馬に劣った。男が呆れて言った「もう少し要領よく働けぬのか」鹿が嘆いて言うには「無理を言うな、私は鹿だ」無理に型に押し込めて教育すると生来の美点を殺すことになるものだ。

【第九話 茨と雀】
 飛び疲れた雀が茨にとまって言った「なんととまりづらい枝だ。足が痛くてかなわん」茨が怒って言うには「文句を言うならはじめからとまるな。他にも木があるのに真っ先に私にとまったのはお前だろう」この話は、己の浅慮を棚に上げて人の粗捜しばかりする人を叱っている。

【第十話 猿とライオンと豹】
 猿がライオンに追われて木に登った。ライオンが木に登れずに困っているのを見下ろして猿が笑っていると、背後から豹が登ってきて食われてしまった。この話は、半端な備えに慢心して油断する者を戒めている。

【第十一話 嘘の起源】
 ゼウスが人間を創造した際、誤って口を二つつけてしまった。試しに喋らせると、同時にあべこべのことを喋るので話を聞き取れなかった。そこで二つの口をつないで一つにしたところ、話は聞き取れるようになったが話す内容の辻褄があわなくなった。これが嘘の起源である。

【第十二話 オタマジャクシ】
 ある水溜まりにオタマジャクシがいた。周りの蛙は「早く蛙になれ」と忠告したが彼は「今のままで十分だ」と蛙になるのを拒み続けた。やがて水溜まりが干上がるとオタマジャクシは助けを求めたが周りはどうすることもできず、そのまま干からびて死んでしまった。

【第十三話 羊と豚】
 デュオニソス祭で羊が1頭生贄に出されることになった。羊たちは恐れおののき、蚤の足音にも怯える有様だった。それを見た豚が笑って言うには「あいつらは気楽なものだ。俺たち豚は遅かれ早かれ全員食われちまうのに」己の不幸を大げさに嘆く者は笑われるという話。

【第十四話 酒飲みとデュオニソス】
 酒飲みが強かに酔い意識朦朧、汚物を吐き散らしつつ言う「酩酊の神よ、なぜあなたは私を苦しめるのですか」にわかにデュオニソスが現れて言うには「お前があまりにも下手糞な飲み方をしたので罰を与えたのだ」味わわずに飲むものは神に罰せられるという話。

【第十五話 臆病な猿】
 以前蛇に噛まれて痛い目にあった猿が、道端の棒切れや紐屑に怯えて避けて歩くようになった。それを見た狐が笑って言うには「行き過ぎた恐怖は知恵を曇らせるものだ」

【第十六話 兎とワニ】
 兎が川で水を飲んでいると目の前にワニがいた。逃げられぬならばと兎はワニを説得しはじめた「あそこに鈍いカバがいる。敏捷な私よりたべやすかろう」ワニが答えて「カバは鈍いが強い。襲えば無事にはすまぬ。しかしお前は敏捷だが弱く安心だ」こうして兎は食われた。

【第十七話 ライオンと豹】
 ライオンが猿を追ったが、木に登られてしまい攻めあぐねた。そこへ豹が来て、するすると木に登って猿を食べてしまった。ライオンが「私の獲物をなぜ横取りするか」となじると、豹が答えた「力を持つ者ではなく、力を使う者が獲物を得るのだ」

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